取材・文=柿崎優成
JR東日本カップ2020第94回関東大学サッカーリーグ1部の第6節が8月9日に開催。前節、開幕戦以来の白星を獲得した桐蔭横浜大学が連勝を目指して筑波大学との一戦に臨んだ。
後ろから組み立てる筑波大に対し、相手の立ち位置を見ながら攻撃のチャンスを窺う桐蔭横浜大。開始早々に試合は動いた。13分にゴールやや右寄りで得たFK、FW松本幹太が放ったシュートはクロスバーを直撃したが、こぼれ球をFW篠原友哉が頭で押し込み、桐蔭横浜大が先制する。
「筑波大はボールを動かすチーム。引くつもりはなかったけれど、引かされるような形になった」と安武亨監督は振り返ったが、次の1点も桐蔭横浜大に生まれた。サイド攻撃に活路を見出そうとしていた桐蔭横浜大は30分、MF神垣陸のサイドチェンジから右サイドのMF加々見登生へ。サポートに入った松本が浮き球のパスを篠原に送ると、篠原はゴールを背にして足裏で合わせ、技ありのゴール。「いつもなら違うプレーを選択するような場面だったけど、チーム全体でシュートが少ない課題があったので、意識的に狙っていた」と振り返った。
2点のリードで勢いに乗った桐蔭横浜大は36分、クロスボールをMF橘田健人がミドルレンジからダイレクトボレーで合わせ、試合を決定づける3点目を奪う。安武監督は「ゴールに向かうことをテーマに練習してきて、意識の変化が結果に表れた。すごく満足している」とチームの成長に目を細めた。
前半で3失点を喫した筑波大。ディフェンスラインを統率するDF角田涼太朗は、「パスをスムーズに回せず、ゴールに直結するプレーをする選手が少なかった」と反省点を口にした。筑波大は後半開始からケガ明けのFW森海渡とパスセンスが特徴のMF山内翔を投入。すると、その山内翔が早速、得点に関与した。51分、山内が右サイドのスペースに展開すると、パスを受けたMF山原怜音は相手DFの裏に抜けたMF加藤匠人へスルーパス。加藤のグラウンダーのクロスをファーサイドでFW和田育が押し込み、1点を返した。前節と同様にディフェンスラインの背後からゴールを決めた和田は、「後半最初のチャンスで点を取ることを目標にしていた。相手の視野から消える動きは自分の特徴」と得点シーンを回顧した。
しかし、後半早々に1点を返されても、この日の桐蔭横浜大に焦りはなかった。「選手たちが柔軟に対応してくれて、我慢する時は我慢してくれた。選手たちが大人になってきた」と安武監督。守備に回る時間が増えたなかで、攻撃が持ち味のMF加々美登生が最終ラインに下がって守備に貢献し、攻撃の中心選手であるMF鳥海芳樹は前目の位置取りを維持して相手DFの脅威になっていた。
「加々美は前目の選手なのに、あれだけ下がってプレーしてくれた。その分、左サイドの鳥海芳樹が下がらず、新しい良い形が見えた」(安武監督)。終盤にはFW山田新やFW寺沼星文を起用するなど最後まで攻撃の意識を保ちながらタイムアップを迎え、桐蔭横浜大は3−1の勝利を収めた。
2連勝と復調の兆しを見せつつある桐蔭横浜大。2得点の活躍を見せた篠原は、「ゴールへの意識がより高くなり、勝ちへのこだわりが強くなってきている」とチームの変化を実感している。
一方、敗れた筑波大の小井土正亮監督は、「前線に点を取れる選手がいるかいないかが明確になった試合。前を向くプレーやミドルシュートを打つ、クロスをピンポイントで合わせるなど最後のクオリティに欠けた」と攻撃面の課題について言及した。
桐蔭横浜大は次節、15日に慶應義塾大学と対戦。筑波大は延期分となっている第1節の順天堂大戦に中2日で挑む。