富士市立、多彩な攻撃で浜松開誠館に5発大勝…重きを置く“遊び心“と仕掛ける姿勢/プリンス東海

 5-1の大差で迎えた後半アディショナルタイムでのCKの場面。ゴールキーパーまでもが得点を狙って相手ゴール前に上がってきたのは、リードしている富士市立高のほうだった。観衆の中から聞こえてきた、「これこそが“遊び”だよ」の声。《今こそ遊びがものをいう》というスローガンを掲げる富士市立は、試合終了の笛が鳴る瞬間までゴールに向かうことをやめなかった。

 5月4日に行われた「高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ2019東海」第5節、浜松開誠館高との一戦。富士市立は11分に渡部天斗の得点で幸先よく先制した。しかし、「1点取った後に少し引きすぎてしまった」とキャプテンの勝亦健太が振り返ったように、先制後は浜松開誠館に主導権を渡してしまった。39分、廣渡優太に直接FKを沈められ失点。追いつかれる形で同点となり、流れが嫌な方向に傾きかけた。だが、ハーフタイムに「引かないように気をつけて、自分たちのサッカーをしようという話をしました」(勝亦)と修正を図り、その狙いどおりに後半立ち上がりから攻撃陣が奮起する。

 53分、進藤克樹が鮮やかなループシュートで勝ち越しゴールマーク。さらに58分には、中央で西條蓮からのラストパスを受けた芦澤陸が落ち着いて3点目を奪う。67分には左CKから仲澤俊輔がヘディング弾を叩き込み、89分には右からのクロスボールに川村昂大が合わせて5得点目を奪取。「特に後半は自分たちのペースでうまく試合運びができたと思うし、たくさん点が取れて、プレーしていて楽しかった」と勝亦。多彩な攻撃で次々に得点を重ね、昨季の高校選手権静岡県大会王者である浜松開誠館に対して5-1と圧倒してタイムアップを迎えた。

富士市立高グラウンドに掲げられている横断幕

 今季、プリンスリーグ東海に初昇格した富士市立は、第5節までを消化して3勝1分1敗の勝ち点10で5位。杉山秀幸監督は「まずまずの出来」とある程度の手応えを口にしている。

「(開幕前は)やってみないとわからない部分もありましたが、相手が強ければ強いほど気合いが入る選手たちですし、チームのスタイル的にもある程度はやれると感じています」

 第4節の藤枝東高戦こそ、「カテゴリーが上がって、強度の高い試合が続いていた中で選手たちに疲労が溜まってしまった」(杉山監督)影響もあり、1-3で初黒星を喫した。だが、修正点を把握し、しっかりとコンディションを整えて臨んだ結果が今節の大勝。「毎節強いチームと対戦させてもらい、良い勉強になっています」(杉山監督)と一戦一戦、成長の跡を残している。

 11日の第6節(中京学院大学附属中京高戦)を終えると、いよいよ高校総体(インターハイ)の県大会にシード校として登場する。リーグ戦開催期間中も、チーム内で合言葉にしているのは「沖縄に行く」こと。県大会を制し、沖縄で開催される全国大会の舞台を踏むことが目標だ。

 杉山監督は「プレッシャーが少なかったり、(プレーの)選択肢が多かったりすると相手の罠にハマってしまうところがあるので、(県大会の初戦が)非常に危ないですね。相手が来るのを待つのではなく、ボールを持った時にいつもよりもテンポを上げていくぐらいじゃないと」と警戒心を強める。プレーに“遊び心“を持ち合わせながら、「自分たちから仕掛けていくこと」で勝負にこだわる富士市立。プリンスリーグでの勢いのままに高校総体予選でどこまで躍進を遂げるのか、注目したい。

文・写真=平柳麻衣