成岡輝瑠の背中を追いかけ、「ボランチとしての役目」を学ぶ清水ユースMF山田理矩

[高円宮杯JFA U-18サッカースーパープリンスリーグ2020東海・第4節(10月4日)/富士市立高校 0-5 清水エスパルスユース]

 立ち上がりの出来が結果を大きく左右した。敵地・富士市立グラウンドに乗り込んだ清水エスパルスユースは前半26分までに5点の大量リードを奪い、勝負を決定付けた。富士市立のキャプテン・勝又大翔は「思ったより(清水ユースが)最初からガツガツ来たので、そこでやられてしまった」と悔やんだが、序盤からエンジン全開で臨んできた“格上”チームの勢いを止めるのは容易いことではなく、プレーの強度やスピード感に慣れる前にみるみる点差が開いていった。

「最初のプレーが本当に大事だと思っていて、今日の相手は個人技が上手い選手が多かったけど、どんどん前からプレスを掛けていけば、相手も出しどころに困って焦るだろうと思った。みんなで連動して守備に行けたことが大きかったと思います」。そう手応えを口にしたのは、ボランチとしてフル出場した清水ユースの1年生MF山田理矩だ。

「ボールを取られた後の切り替えをいかに早くできるかどうかはボランチがカギ。また、縦パスをどんどん入れたりして攻撃をスムーズにするところを意識してプレーしました」

 山田はチーム全体の連動した守備を担う一員となっただけでなく、積極的な攻撃参加で試合のリズムを生み出した。21分にはチームの4点目となる追加点をマーク。伊藤滉平からのパスに左足を迷いなく振り抜きボールをネットに突き刺すと、「昨日シュート練習をした時から上手く入れることができていたので、今日もボールが蹴った瞬間に入ったと思った」と笑顔を見せた。

 結局、清水ユースは前半のリードを保ったまま5-0の完勝を収めたが、90分をとおしての試合運びには満足していない。シュート数だけを見れば前半11本、後半10本とほぼ同数のチャンスを作ることができていたものの、後半は無得点に終わり、ポゼッションサッカーを得意とする富士市立にペースを握られる時間も増えた。すると、山田は次のように反省の弁を述べた。

「(後半は)切り替えが遅かったし、自分がもっと連動的に動いて縦パスを多く入れられれば良かったけど、ミスが続いて立て直すのに時間がかかってしまった。前半はできていたことが後半はできなくなってしまったので、フル出場でも保つように運動量をこれからもっと上げていかないといけないし、ボランチとしての役目をまだまだ果たせていない」

「ボランチとしての役目」を学ぶうえで、山田が強く憧れを抱くお手本が身近にいる。来シーズンからのトップチーム昇格が決まっており、すでにJ1デビューも果たしている3年生の成岡輝瑠だ。山田がユースに上がった今シーズン、成岡はトップチームに帯同している時間が多く、この富士市立高戦も不在と接点を持つ機会は少ない。だが、成岡は限られた時間の中で少しでもユースに経験や知識を還元しようと働きかけてくれるという。

「輝瑠くんが何回かユースの練習に来た時、一緒にボランチを組んだこともあるし、紅白戦で別々のチームになった時もいろいろなことを教えてくれて、すごく勉強になります。よく言われるのは守備のところと、縦パスを入れるタイミングとか。輝瑠くんは上手いだけじゃなく、そうやって優しく教えてくれる一面もあるし、何より、輝瑠くんがユースの練習に来るだけでチームの雰囲気がガラッと変わるんです。自分もそういう選手になりたいので、もっと頑張らないといけないなって思います」

 新型コロナの影響を受けて公式戦のレギュレーションが変わっても、今所属する選手たちにとっては大事な1年、大事な一戦であることに変わりはない。だからこそ5-0という結果にも慢心することなく、互いに切磋琢磨しあい、チーム力の底上げを目指して歩みを進めていく。