取材・文=藤井圭
早稲田大学は国士舘大学に5ー0で完勝した。前節3失点を喫した守備陣は見事に完封を達成。その最後尾には、常にチームを第一に考えてプレーするGK山田晃士が立ちはだかった。
この試合で5度ネットを揺らした早稲田大だったが、先制点を奪ったのは前半アディショナルタイム3分を経過した頃だった。それまでの時間は国士舘大に攻め込まれ、あわや失点のピンチを招くも山田を中心とした早稲田大の守備陣が守り抜く。国士舘大に攻められた時間も「うまくいかないことは想定内だった」と振り返り、守護神が最後まで得点を許さなかったことで後のゴールショーへとつながった。
そのゴールショーの中で、山田は精度の高いキックで最後尾から攻撃の起点にもなった。山田が蹴ったライナー性のボールは左に抜け出した水野雄太へ渡ると、水野はドリブルから中へ折り返し、相手GKが弾いたボールをMF丹羽匠が詰めてチームの3点目を獲得。「背後にボールを置こうというチームの狙いがあった。僕自身としてはボールを届けるということだけだった」とプレーの意図を明かした。山田はキックに対して、「チームを疲れさせないとか雰囲気を崩さないように」というこだわりを持っている。その強い意識が、試合を決定づける1点を創出した。
さらに山田は試合中に終始大きな声とジェスチャーを駆使してコーチングを行った。「伝えるということはサッカー以外でも大事にしている」と日常生活から考え、試合中でも味方のDFに対して守備への具体的な意図を伝えるなど、積極的にコミュニケーションを取って意思疎通を図っている。
伝え方についても「ただそれを(そのまま)伝えるだけでは、すべて伝わらない時もあると思う。どういう状況で誰に対して伝えたいことを言うのかということを意識している」とチームの状況や雰囲気を見ながら、的確なタイミングを見計らってコーチングを行うことで守備陣を支えている。
コーチングに際しては、守備陣への高いリスペクトも窺える。主将のDF杉山耕二については、国士舘大の攻撃に対して積極的にブロックに入ったシーンを挙げて「彼の素晴らしいところだと思う。誰かのために誰かの力になるということを彼が体現している」と敬った。2年生のDF監物拓歩に対しては「のびのびやらせることで彼自身、いいパフォーマンスが出せる性格」と表現して信頼を口にしている。
キックでもコーチングでもチームを第一に考えてより良い選択を行う。早稲田大の外池大亮監督も守備陣を「チーム全体を見ながらプレーしていて、それが試合のクオリティを上げている」と評しており、リーグ最少失点、7戦6勝と結果としても表れている。山田の「チームのためになることを逆算して考えて」行うプレーの一つひとつがチームのミッションや哲学を表現しており、早稲田大を頂点へと導くことにつながっている。