山梨県中央市出身の明治大DF須貝英大、憧れの地元クラブ甲府で「勝負する」

[JR東日本カップ2020第94回関東大学サッカーリーグ戦1部・第15節(10月31日)/明治大学 2-1 慶應義塾大学]

取材・文=柿崎優成

「地元の選手が活躍することは山梨県が盛り上がることにつながり、サッカー選手としての意義を感じる。だから甲府を選びました」

 明治大学のDF須貝英大は来シーズンからのヴァンフォーレ甲府加入が内定している。須貝は甲府に対して並々ならぬ思いがある。地元・山梨県中央市出身。印象に残る甲府と言えば、2012年にJ2で優勝し、J1で戦う姿だった。真近で見てきた地元のJリーグクラブは、自然と憧れへと変わっていった。

 高校は静岡県の浜松開誠館高校へ進学し、大学はプロ選手を毎年多数輩出する明治大学へ。名だたる選手が同期にいる中で須貝は主将を任されるまでに成長した。

 主将として臨んでいる大学ラストシーズン。明治大は「昨年の勝ち点を越える」ことを目標に関東大学リーグを戦っている。第15節の慶應義塾大学戦は劣勢を強いられ、前半早々に失点してしまった。その後は明治大ペースで試合が進むも、慶應大の守備網を崩せずに時間が過ぎた。

「先制される厳しい展開。でも早稲田大が今日勝っていて、自分たちも勝たなきゃいけなかった」

 他会場で行われた早稲田大の試合結果は耳に入っていた。勝ち点差1で争うライバルに差をつけられたくない思いがプレーに乗り移った。

 スコアが動いたのは86分。右サイドから攻撃の起点を作りMF力安祥伍の折り返しのクロスにファーサイドから須貝がダイビングヘッドで押し込み同点に追いついた。「気持ちで押し込んだゴール」と反撃の狼煙を上げると、終了間際にはCKの競り合いからPKを獲得。

「ヒデ、蹴れ!」

 ピッチサイドから栗田大輔監督の指示が入り、須貝がキッカーに。「決めるか決めないかで勝ち点も変わってくる」。そう言い聞かせてボールをセットした須貝は、ゴール正面に蹴り込んだ。シュートはネットを揺らし、明治大は逆転で勝利を収めた。

 “攻撃的サイドバック”が売りの須貝は、何より運動量には目を見張るものがある。慶應大戦では、味方のパスのタイミングを見てオーバーラップしたり、アタッキングサードに入る回数が多く、攻撃に厚みをもたらしていた。「今日も14キロ近く走っていて、Jリーグにいっても全然通用するし、突出している能力」と栗田監督は高く評価する。また同期のDF佐藤瑶大も「チームの中で一番走れる選手」と一目置いており、チームメイトからの信頼も厚い。

 須貝はJFA・Jリーグ特別指定選手としてすでにJ2リーグ2試合にフル出場し、プロのレベルを肌で感じている。「スピード感や強度でプロは違うなと感じた。でも、守備の面では自信を持って特徴を発揮できたと思う」と出場したアルビレックス新潟戦とツエーゲン金沢戦のプレーを振り返る。地元クラブで「勝負する」と決めた彼は、「チームを勝たせられるようプレーの質を高め、ゴールに直結するプレーを見せていきたい」と意欲を高めている。

 リーグ2連覇に向けて気を休める暇はない。「今日の試合を落としてしまうと、昨年の勝ち点56を超えることが不可能になってしまうところだった。勝ち切れたことが良かった」。次節は今シーズン初黒星を喫した国士舘大学戦。その翌週には早稲田大との直接対決が控えている。連覇を置き土産にプロの世界へ行くために、真価が問われる試合が続く。