現代的GKの素質を備える東京V内定・順天堂大GK佐藤久弥「オファーが来てすごくうれしかった」

[JR東日本カップ2020第94回関東大学サッカーリーグ戦1部・第22節(12月19日)/順天堂大学 3-1 中央大学]

取材・文=柿崎優成

「オファーが来た時はすごくうれしかった。プロ行くならヴェルディに行きたいと思っていたから」

 12月13日、東京ヴェルディは順天堂大学GK佐藤久弥の2021年シーズン加入内定を発表した。東京Vユース出身の佐藤にとっては“古巣“への帰還だ。

 リリースから6日後の19日、佐藤は関東大学リーグ第22節・中央大学戦に先発出場した。前半はサイドの選手が高い位置を取る相手の攻撃に手を焼き、押し込まれる時間が続いた。しかし、「DF陣と上手く連携が取れた」と振り返るように、センターバックで出場した山崎大地や上野瑶介とともにピンチを凌いだ。その中で佐藤はディフェンスの裏を取られた時の反応の速さや素早い寄せでシュートコースを塞ぎ、チームに安定感をもたらした。

 試合は後半に追いつかれるも、終盤の2ゴールで勝ち越し、順天堂大は3-1で最終節を勝利で締め括った。

「GKとして身長は低い方だけど、飛び出すタイミングやポジショニングを大事にしていて、一対一の至近距離のシュートストップが上手い」という堀池巧監督の評価に加え、佐藤の特徴は攻撃時に光る。「自分のパスから流れを変えるプレーをしたい」と語るように、前目のポジショニングでビルドアップに参加したり、広い視野から正確な浮き球のパスを繰り出すなど、現代GKに求められる素質を兼ね備えている。

 足元の技術に磨きをかけたのは東京Vユースに所属していた高校3年時からだ。テクニカルなサッカーを展開する東京Vユース時代に続き、大学進学後も1年時から正GKの座を確保し、ボールをつなぐサッカーを志向する順天堂大でさらなるレベルアップを図った。

「GKは経験が大事。信頼して使ってくれた堀池監督に感謝したい」

 1年時から順天堂大の最後の砦として君臨し続けてきた佐藤への評価は高く、デンソーカップチャレンジサッカー大会の全日本大学選抜には1年時から3年時まで続けて選出され、大会が中止となった今シーズンも関東大学A選抜に名を連ねていた。

 順風満帆に見えた佐藤に試練が訪れたのは、最終学年を迎えた今シーズン。一時期、1年生ながら頭角を現してきたGK廣濱顕哉にポジションを譲り、苦しい時期を過ごした。

 しかし、この時期こそ佐藤の成長につながった。堀池監督は「出られない時期もくさらず、試合に出たら一番声を出してチームを鼓舞してくれた。GKにとって重要なことに気づいたと思う」と目を細める。佐藤自身もまた、「プロでやりたいという気持ちが第一にあったので、悔しさを押さえながらブレずに練習してきた。練習から持ち味を見失わずに続けて来れたことが今につながっている」と振り返った。苦しい時間を乗り越え、心身ともにタフな選手へと変貌を遂げたのだった。

 東京Vは来シーズン、明治大学からMF持井響太、FW佐藤凌我、中央大学からDF深澤大輝が加入する。なかでもこの日の対戦相手にいた深澤は佐藤と同じく東京Vのアカデミー出身で、旧知の間柄だ。

「大輝は小さい頃から一緒にやってきたので、大学で対戦できて楽しかった。前はセンターバックだったけど今はサイドバックに変わって、今日も良いシュートを2本打ってきた。これからはまた一緒に切磋琢磨していきたい」

 深澤をはじめ、関東大学リーグで火花を散らしたライバルたちとともに今度は同じエンブレムを胸につけ、プロの舞台に乗り込む。