弟・理生はFC東京トップ昇格内定…兄弟対決を夢見る日大MF大森渚生「自分は“緑の血”が入っている人間」

[JR東日本カップ2020第94回関東大学サッカーリーグ戦2部・第13節(10月17日)/流通経済大学 2-1 日本大学]

取材・文=柿崎優成

  緑と青赤――。東京に本拠地を置く2つのクラブが、日本大学MF大森渚生にとってはプロへの道のりを強烈に意識づける存在となっている。

 東京ヴェルディユース出身の大森は、大学1年時から出場機会を得て、3年生となった今はチームの主力を担っている。主戦場は右サイドハーフだが、大学入学後は慣れ親しんだポジション以外にボランチやサイドバックなど多数のポジションを経験。ポリバレント性を身につけ、成長のスピードを上げている。

 10月17日に行われた関東大学リーグ第13節・流通経済大学戦は1-2で逆転負けを喫し、チームとしては5連敗の屈辱を味わったものの、その中で大森は先制ゴールをマークし、光るものを見せた。32分、流経大のパス回しをカットして素早く右サイドに展開。空いたスペースに運んだMF近藤友喜の折り返しを冷静に流し込んだ。

「大学に入って良かったのは、プレーの“引き出し”が増えたこと。自分の特徴はどこのチームに行っても出せる自信はあるので、この先プロを目指すうえでチーム状況やポジションを問わず、一定以上のクオリティを出していきたい」

「プロ」という言葉をはっきりと口にした。大学経由で目標に向かって努力を重ねる大森に、大きな刺激を与えてくれている人物が2人いる。

 1人は東京Vアカデミー時代の同期、藤本寛也だ。小学生時代からの仲である藤本について、大森は「今まで出会った選手の中でサッカーセンスがズバ抜けている」と印象を語る。ユース時代まで一緒にプレーし、藤本は2018シーズンからトップチームへ。永井秀樹監督が率いる今シーズンは主将を任され、夏に今夏ポルトガル1部ジル・ヴィセンテへ移籍した。

「早くから試合に出てキャプテンも務めて、今は海外に挑戦している。彼はいずれA代表でプレーすると思う。常に刺激を受けていますし、また同じ舞台に立ちたい」。ピッチで再会を果たすことが、大森にとっては大きなモチベーションとなっている。

 そして大森に影響を与えている2人目は、FC東京U-18の大森理生だ。兄弟である2人は、幼少期こそともに切磋琢磨していたが、その後、兄の渚生は東京V、弟の理生はFC東京の育成組織に加入し、それぞれの道でプロを目指してきた。兄の渚生はトップ昇格がかなわなかったのに対して、弟の理生は高校2年で明治安田生命J3リーグ21試合に出場。来シーズンからのトップチーム昇格が内定している。

 兄の心境は複雑だ。

「兄としてはうれしいけど、メチャクチャ悔しいです」

 だが、身近な存在からこそ、弟の“強さ”も知っている。

「小さい頃は正直、自分のほうが評価されていると感じていて、弟のほうが悔しい経験をたくさんしてきたと思う。でも、弟はそれを跳ね除けるメンタルの強さを持っていた」

「今度は自分が這い上がる番」と誓う大森は、Jリーグでの“兄弟対決”を夢見て、1年半を切った残りの大学生活に全力を注いでいる。今後、彼が何色のユニフォームを着ることになっても変わらない事実がある。それは、渚生と理生の対決が“緑“と“青赤”の魂のぶつかり合いであるということだ。

「ヴェルディは小学3年生から高校卒業までプレーさせてもらい、僕にサッカーのすべてを教えてくれたクラブ。今後、進路がどうなるかはまだわかりませんが、どこに行っても自分は“緑の血”が入っている人間であり、ヴェルディが愛するクラブであることは変わらないと思います」