取材・文=柿崎優成
順天堂大学のMF白井海斗は今シーズンの関東大学リーグでチーム内2位の5得点を記録した。9試合と少ない出場試合数にとどまったのは、今シーズンならではの特殊な事情がある。
白井は教員免許を取得する教育実習のため、一時チームを離れていた。従来であれば3週間。しかも、土日はチームに戻り、公式戦への出場も可能だった。ところが、今シーズンは新型コロナウイルス感染予防のため、受け入れ先の高校からの「実習の2週間前から地元に戻ってほしい」という要望に応えざるを得なく、当然、実習期間中にチームに戻ることも不可能となった。順天堂大の堀池巧監督は「5週間いない状況は厳しかった」と苦しい胸の内を明かした。
約5週間チームから離れた白井だが、実習の合間を縫ってコンディション調整を怠らなかった。
「結果を残さないと試合に出られないし、チームの勝利に貢献できない」
離脱中もチームへの思いを保ち続けた白井は、合流後の11月21日の早稲田大学戦で2ゴールをマーク。そして最終節の国士舘大学戦では1得点1アシストの活躍でチームに勝利をもたらした。
前半は思いどおりの試合ができなかった中で30分、中央大守備陣の一瞬の隙を見逃さず、左サイドからドリブルで侵入。ディフェンスラインの裏を狙った浮き球のパスを送り、FW大森真吾の得点を演出した。堀池監督は「得意のトリッキーなパスは彼の良さ」と称賛した。
73分に同点弾を浴びたが、両者勝ちたい気持ちがぶつかり合う中、決勝点が生まれたのは85分だった。カウンターからMF小林里駆のスルーパスに反応した白井がドリブルで持ち込み、シュートコースが狭いニアサイドを撃ち抜いた。
「追いつかれて流れを持っていかれそうな時に左サイドからFWにポジション変え、しっかり点を取ることができた」
さらに終了間際には新関成弥が追加点を決め、順天堂大は3-1で最終節を白星で飾った。
白井は清水桜が丘高校時代、トップ下やFWと中央でプレーする機会が多かった。しかし、順天堂大に進学後はサイドハーフを主戦場とし、自身が得意とする「ドリブル」を活かしながらチームに貢献している。「相手を剥がしてチャンス作ったり、多くの選択肢を持ちながら判断して、楽しくやっている」と充実の表情を覗かせる。
順天堂大はリーグ戦の全日程を12勝8敗2分けの成績で終えた。リーグ戦の開幕から1カ月遅れて8月から参戦したチームは序盤戦、他大学との試合勘の違いや過密日程の影響から苦戦を強いられた。しかし、9月中旬を境に状況は好転。前期リーグで敗戦を喫した明治大、早稲田大、桐蔭横浜大に勝利するなど最終的に3位につけた。
「僕が教育実習でいなかった間、週に2試合こなしていたメンバーはキツかったと思う。踏ん張って、支え合って、みんなでつかみ取った順位であり、全国大会出場権。チーム内で新型コロナ感染者を誰1人出さず試合ができたこと、監督、スタッフ、選手みんなで健康管理を怠らず乗り越えたことは本当に良かった」
チーム一丸とになってつかみ取った全国切符。白井は1月6日開幕の『#atarimaeni CUP サッカーができる当たり前に、ありがとう!』に向け、「関東以外の大学と対戦することになるので対策をしっかりして、自分が点を取る気持ちで準備したい」と必勝を誓った。