九州の地で奮闘する前橋育英高初優勝メンバー、鹿屋体育大MF五十嵐理人「プロの世界でみんなと戦いたい」

取材・文=柿崎優成

 3年前の2018年1月8日、全国高校サッカー選手権大会で前橋育英高校が初優勝した。当時のメンバーから2人がJリーグの世界に進み、その他の選手の多くは関東の強豪大学に進学した。その中で九州の地を選び、プロを目指してレベルアップを図っている選手がいる。鹿屋体育大学のMF五十嵐理人だ。

「声をかけてくれた鹿屋体育大はサッカーに集中できる魅力的な環境だったので、すぐに決めた。他の選手の多くは関東に残る選択をしたけど、自分は違う地域で、みんなより成長したい気持ちが強くあった」

 プロ選手輩出人数を見れば、関東一強の流れが顕著にある大学サッカーにおいて、他の地域の選手は日の目を浴びないこともしばしば。しかし、それでも九州地方の大学から毎年Jリーガーは誕生しており、J1で主力としてプレーする選手もいる。チーム単位で見れば関東とのレベルの差があっても、決して選手のレベルが低いわけではない。

「九州の大学にも良い選手はいる。例えば根本(凌/湘南ベルマーレ内定)とか宇津元(伸弥/大分トリニータ内定)。リーグ戦で刺激しあって戦える環境が整っている。同じアタッカーとして勉強になる」。九州の地を選んだことは、五十嵐にとって自身の成長のためにプラスに働いている。

 五十嵐は九州選抜に初選出され、『デンソーサッカーチャレンジ熊谷大会』に臨んだ。同選抜には鹿屋体育大から5人が選ばれたが、「普段違う大学の仲間と連携を取るのは難しかった」と最初は戸惑いを隠せなかった。だが、「試合を重ねていくにつれて連携が良くなって、チームとして良いプレーができたし、自分のやりたいプレーも発揮できた」と初めての選抜活動に充実感を得た。

 グループリーグに続き、2度目の対戦となった関東B・北信越選抜との3位決定戦。後半から途中出場すると、特徴であるスピードを生かしたドリブル突破で一矢報いようと攻撃陣をけん引した。すると85分、「相手の背後を狙いたかった」という意図で味方がゴールキックからつないだボールをDFの背後に抜けてシュート。GKに弾かれたこぼれ球をMF立岩玄輝(日本文理大学)が詰め、再びこぼれたボールは五十嵐の元へ。意地で押し込んだ。しかし、2度目の対戦は2-4で敗れ、九州選抜は4位で大会を終えた。

「1戦目で力の差を感じて、今日の試合は特徴を出して勝利に貢献したかった。実力差が見えた大会でした。でも、得点を取るという面ではプラスに捉えています」

 関東勢のレベルの高さを痛感し悔しさを募らせた一方で、得点という目に見える形で爪痕を残したことで、「チームに帰ってからレベルを高めていきたい」と目線は上を向いている。

 今大会の4試合で前橋育英時代の同期との対戦は一度も実現しなかったが、関東選抜Aに選出されていた筑波大DF角田涼太郎(横浜F・マリノス加入内定)や法政大学MF田部井涼、FW飯島陸らの活躍はSNSでチェックし、自分を奮い立たせている。

 もし関東の大学に進学していれば――。定期的に元前橋育英のメンバーと対戦する機会があった。しかし、五十嵐は「プロの世界でみんなと戦いたい」と長い目で同期との対戦を心待ちにしている。迎える大学生最後の年。「絶対プロにいきたい。自分は自分の環境で成長するだけなので、(彼らを)追い抜く勢いでやっていきたい」。そう語る五十嵐の目に闘志がみなぎっていた。