「“3度目の正直”になるように、絶対に勝ちにいきたい」(松村優太)
静岡が誇る技巧派軍団・静岡学園が、5年ぶり12度目の全国高校サッカー選手権大会出場を目指して、富士市立との県大会決勝に臨む。
準決勝では昨年、決勝で敗れた浜松開誠館に対して「決勝戦のような気分で戦った」(阿部健人)末、2-0の完封勝利を収めた。だが、「仮は返せたけど、決勝で負けたらまた去年、一昨年と同じ。全国に行けなければ意味がない」(松村)。2年連続で準優勝と苦杯をなめているチームに慢心はない。
決勝では、全国切符獲得はもちろんのこと、もう一つ、負けられない理由がある。それは、富士市立のサッカーが静岡学園と似通ったスタイルであることだ。全国区に名を知らしめる強豪校の静岡学園に対し、富士市立は今大会が初の県決勝進出。経験値で圧倒的な分があり、背負うプレッシャーも比にならない。だからこそ、川口修監督は勝利だけにこだわる。
「(富士市立は)技術で勝負してくるチームで、我々も技術のところがストロングなので、サッカー的には同じ感覚。ただ、我々は昔からそういう伝統を引き継いでやってきているので、そこの部分では負けたくないですし、試合にも勝ちたい。どちらが上手いか、お互いのプライドがぶつかり合う戦いになると思います」
キーマンとなるのは、準決勝で2得点を挙げたエース・松村だ。50メートル走5秒8の快足を誇るドリブラーは、来季の鹿島アントラーズ加入が内定しており、当然ながら相手チームのマークも厳しくなる。しかし、当の本人はそれも「想定内」とし、準備を怠らずに取り組んできた。
「相手にマークされるのは総体の時からそうでしたし、J加入内定発表の後はさらに厳しくなるだろうと予想はしていました。だからこそ、動き出しの部分やドリブルを磨いて、相手が何人止めに来ても抜いていけるようなプレーにこだわっています。ドリブルやシュートの精度を上げることで、自分のプレーヤーとしての価値が上がると監督に言われ続けているので、そこは決勝でも意識して続けていきたいです」
チームメイトも彼の力に頼りきるのではない。阿部キャプテンが「マツの武器はスピード。自分たちとしては、それを生かせるような動きをしたい」と話したように、彼の良さを最大限に活かすために援護する。
2年連続で悔し涙をのんできた3年生にとっては、全国大会に出る最後のチャンス。川口監督は、高校年代で最も注目度の高い“選手権”に出ることの意義を強く認識している。
「全国の舞台を経験することで、違う世界が見えてくる。やっぱり歴代の先輩たちも、あの景色を見た選手がJリーグで活躍できているので、全国に行くか、行かないで選手のサッカー人生が大きく変わるんです。だから、どうしても勝って、全国で戦いたい。全国のピッチに選手を立たせてあげたい。その気持ちでいます」
富士市立との今季プリンスリーグでの対戦成績は1勝1分と負けなしだが、何が起こるかわからないのが一発勝負の怖さ。過去2大会、さらには直近の新人戦、インターハイも県決勝で敗れている経験を糧にできるか。11月16日、静岡学園の真価が問われる。