文=柿崎優成、写真=工藤栞
トップチームがJ1残留を決めた翌日。寒空の下、逆転優勝に向けて奮闘する清水エスパルスユースは横浜FCユースと対戦。
「エスパルスの勝利で勇気や元気を与えられると思いましたし自分たちも勇気もらいました。今日は絶対勝たなきゃいけないと改めて思いました」
トレーニング時間の都合上、リアルタイムで試合を見る事は出来なかったが来季トップ昇格内定のDF菊地脩太はトップチームの戦う姿勢を見習い試合に臨んだ。
立ち上がりはセットされた横浜FCユースのハイプレスから連動した攻撃、縦パス一本で自陣深くまでやってくる戦法に手を焼いた。
「相手のビルドアップを警戒していて飛び込むとやられると話していてプレーの位置が低くなって高い位置で起点をつくられてしまった」と岩下潤監督が言うように試合の入りはアウェイチームの勢いに後手にまわる。すると13分にゴールキックから始まるパス回しにミスが生じて先制を許した。
「失点した時間も早かったので慌てることなく戦えたのは成長だと思います」(菊地)
失点しても、まだ時間はある。状況を変えようと選手同士で試行錯誤してプレーの位置を高めて徐々に主導権を握ろうとパスが繋がるようになる。34分に右サイドで起点を作る形からコーナーキックを獲得。MF金子星太のコーナーキックがファーサイドに流れてボールを拾ったMF山田理矩が「ミドルシュートは狙っています」と言うように左足を振り抜きスコアをイーブンに戻す。
「最初の頃は浮いたり枠外のシュートが多くて練習してうまくなってきて決まるようになりました。自分のゴールで前半に追い付けたことが大きかったです」(山田)
流れを変える同点ゴールはチームを前進させた。9節のアウェイ戦、クラブユース選手権の決勝トーナメントと3度目の対戦から守備の対応でも1対1のシーンを2対1の形で数的優位を作り相手の攻撃の芽を潰す。顕著だったシーンとして横浜FCユースのキーマンMF山崎太新と清水ユースDF渡邊啓佳のマッチアップが多かった。突破されたとしても最終ラインまで降りて守備に回った山田のカバーの貢献度は高かった。
「1対1にさせるとやられちゃうという考えがあって自分からカバー行って防ぐことができました」
後半は前半と様変わりしてボールを持つ時間が増えると51分に自陣でインターセプトしたMF安藤阿雄依がFW千葉寛汰にパス。千葉が受けるとハーフウェイライン付近からロングシュートを叩き込み意外な形から逆転に成功する。
「寛汰はコースがあれば狙っていて練習試合でも似たようなな感じのをゴールを決めていて、先週の反省も含めシュートのタイミングを逃さなかった結果です」と岩下監督はストライカーたるプレーを称賛。
一進一退の展開から失点して振り出しに戻るのか、1点を守り切れるか、緊張感のある時間が続く。「4点取られた教訓から3バックを敷いて対抗する術」(岩下監督)としてDF石川晴大、DF和田晃生を起用して守備の陣形を整える。
横浜FCユースの山崎のミドルシュートに2度冷や汗をかき、コーナーキックからピンチが続くが冷静沈着なGK中島惇希が失点を許さなかった。「一喜一憂せず相手に隙を与えないようにプレーしていて落ち着いて守ることができました」(中島)
86分、左サイドのコーナーキックから相手GKのパンチングしたこぼれ球をMF鈴木奎吾がボレーシュート。ディフレクトしてネットに吸い込まれ試合を決定付ける3点目が決まった。3−1で清水ユースが逆転勝ちを収め連勝を「7」に伸ばし最終節の逆転優勝に望みを繋いだ。
勝って他会場の結果を待つ最終節の相手は難敵・流通経済大学附属柏高校。「悔しい気持ちを持ってる選手が多い」と菊地言うように前回対戦はGK福井レオナルド明のビックセーブ連発と数少ない攻撃チャンスを活かしての勝利だった。
「ボール取られて守備でも取られたり何も出来なかったです。ボランチの位置で取り切ること、前線に顔出すプレーで3年生に恩返しをしたい」と山田が話せば続けて菊地は
「最近『あと1試合しかない』『2試合しかない』をみんな言ってて、それだけ気合いが入っています。全てを出すこと、チームのために走り切ることを意識して最後の一戦に懸けたいです」とユース最後の試合に向け意気込む。
泣いても笑っても最後の試合。僅かに残る可能性を信じ悲願の初優勝に向けて、積み上げてきた成果を発揮して天命を待ちたい。