コロナ禍の早慶戦で大学初ゴール…早稲田大FW西堂久俊は「素晴らしい舞台を作ってくれた」と感謝

[JR東日本カップ2020第94回関東大学サッカーリーグ戦1部・第20節(12月5日)/早稲田大学 1-1 慶應義塾大学]

取材・文=柿崎優成

 コロナ禍で開催が危ぶまれた第71回早慶サッカー定期戦は、関東大学サッカーリーグ戦に組み込む形で催された。この試合でベンチスタートだった早稲田大のFW西堂久俊は、自分の役割を理解し、出番を待った。

「自分が途中から出る意味はチームに勢いをつけること、そして結果を残すこと」

 55分に慶應大に先制を許し、直後の60分、西堂はMF水野雄太と代わってピッチに入った。すると、すぐに得点チャンスが訪れた。63分、右CKからDF阿部隼人のキックをニアサイドでDF大西翔也がヘディングシュート。クロスバーに直撃したこぼれ球を西堂が押し込み、スコアをイーブンに戻した。1年時から出場機会をつかんでいた西堂にとって、これが大学での待望の初ゴールだった。

 勢いづいた早稲田大は、西堂と同じく途中出場のFW加藤拓己が攻撃の活性化を図った。西堂が自身の特徴である「前への推進力」を発揮。左サイドから縦に突破して攻撃の起点となり、粘り強い慶應大の守備網を攻略しようと試みた。

 試合終盤には相手が前掛になったところでカウンターを仕掛け、西堂がドリブルで独走し、寄せてくる慶應大のDF2人を振り切ってペナルティエリア深くからクロスを上げたが得点にはつながらなかった。試合終了のホイッスルの笛と同時に両者倒れ込む激戦は引き分けに終わった。

 試合後、西堂は「喪失感みたいなものが湧いてきた。4年生への感謝を表現できる絶好の機会だったので、ゴールよりも勝てなかった思いの方が強かった」と振り返った。早慶戦の連勝記録が「8」で途絶えたこと、そしてプレーする選手以外に運営でサポートしてくれる4年生への「勝たせたかった」という想いが悔しさとなってにじみ出た。

 関東大学リーグは後期リーグから観客を入れて開催できることになったが、会場の規模や新型コロナウイルス感染予防の観点から収容数は限られている。それでも駒沢陸上競技場で行われたこの試合では4,032人の来場者が訪れ、普段のリーグ戦とは雰囲気が異なる舞台が整った。

「コロナ禍のご時世で4千人近い人が来てくれて、素晴らしい舞台を作ってくれたことに感謝したい。その中でプレーできる喜びを感じて、この舞台で得点できたことは良い経験になった」と西堂。

 明治大学と激しい首位争いを繰り広げる中、引き分けという結果に満足はできないが、大舞台で決めた大学初ゴールを弾みに、西堂は成長速度を上げていく。