ストライカーとしての責任に応えたFW千葉寛汰、圧巻のハットトリックで清水ユースを4試合ぶりの勝利に導く

[高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグEAST2021・第13節(10月23日)/清水ユース 5-2 浦和ユース]

取材・文=柿崎優成

 プレミアリーグEASTが再開して2試合。清水エスパルスユースは1分1敗で勝ち点を思うように積み上げられず、第9節の横浜FCユース戦も含め3試合勝利がない苦境に立たされていた。この状況をFW千葉寛汰はストライカーとしての責任を感じていた。

「再開して2試合。個人としてもチームとしても上手くいかない状況でボールを供給してくれる仲間にFWとしての責任に応えないといけない気持ちと『自分が点を取らないとチームが勝てない』と感じていて強い気持ちで挑みました」

 奇しくも直近3試合、千葉に得点はなく第8節の市立船橋高校戦を最後に得点を決められていなかった。「自分が点を取って勝たせる」そう気持ちを入れて臨んだホームの浦和レッズユース戦。

「良いイメージを持てずに試合に入ってしまった」と振り返るように9分に先制を許し重い空気がピッチを包む。反撃を試みるも、なかなかチャンスでシュートが決まらないシーンが続く。

「話どうこうで変わるモノではないと思って自分のゴールが状況を変えるじゃないけど、自分が決める以外ないと思って後半を迎えました」

 0-1で前半リードを許し迎えた後半、自信を失いかけたチームを救ったのは千葉だった。

 51分にMF渡邊啓佳が右サイド深くから上げたクロスに千葉が体ごとボールをゴールに押し込んで同点とする。「サイドの選手に深くまで抉ったらふんわりクロスを上げてくれと言っていてしっかり身体が反応できてよかったです」

 このゴールで息を吹き返した清水ユースは56分にCKからこぼれ球をMF安藤阿雄依が流し込み逆転。71分、安藤のクロスにファーサイド走り込んできたMF金子星太がボレーで3点目。76分相手のクリアボールを拾った千葉が決めて続けて84分に途中出場のFW田中侍賢のクロスにヘディングシュートを決めてハットトリックを達成。試合終盤に1点返されるも、ここ数試合の得点力不足の鬱憤を晴らすゴールラッシュで清水ユースは4試合ぶりの勝利を収めた。

 久々のホームゲームでの勝利。トップチームが普段使用する三保グラウンドで臨んだ試合は特別なものだった。

「エスパルスのロゴがあるだけで力強く気持ちが変わってきますし周りがオレンジの幕で一体になるのはすごく心強いです。制限なく皆が入れたら一層良いですけど弾幕からサポーターの想いが伝わってきますし応援してくれる方に勝利を届けたいという気持ちが今日のプレーに乗り移ったと思います。ピッチで躍動する姿や成長したところを魅せられるように頑張りたいです」

 トップチームへの昇格が決まっている千葉は嬉しさと合わせ今後を見据えた決意を示す。

「昇格が決まって、ここからが勝負だなって思いました。ユースは高体連と違ってトップチームに昇格できるメリットがあるのでトップを目指して取り組んだ結果、昇格できて良かったです」

 千葉プレースタイルは一瞬の動き出しや得点感覚でゴールを量産することに加えチームのために走って泥臭く戦う特徴と言える。幼少期、千葉が憧れた当時清水に在籍していたFW岡崎慎司を模範とするようなプレースタイルだ。

 1年時からプレミアリーグで出場機会を得て年代別代表にもコンスタントに招集され注目を浴びる存在だった。周りの期待の声に動じることなく千葉は至って冷静で自分を「チャレンジャー」と表し、この姿勢はトップチームでプレーする来シーズンも変わらないだろう。

 FWの層が厚い現在のトップチームで出場機会を掴むには相当なアピールが必要だ。

「プレミアリーグで自分にマークが集中してくる中でも相手を上回っていかないとプロでは戦えないと思ってます。1年目どうこう関係なくアピールして試合に絡んでいきたいです」

 来シーズンからトップチームでプレーすることが決まっているからこそ見せるべき姿がある。自身の得点がチームにもたらす影響を自負している千葉は「この勝利で自信がつくと思うし個人的にも1点取ることで心の余裕もできました。みんな自信持って伸び伸びと戦えたのでエースの責任かなって思います」と話す。

 勝利して巻き返しを図る清水ユースの見据える先は急がず一戦必勝と千葉は言う。

「再開2試合は優勝や首位の青森山田を意識した戦いをして勝ち点を落としてしまった。改めて目の前の試合に集中することが大事と感じたし前半戦はそれができたからこそ勝てたのでもう一回チームとして目の前の試合に集中して最高の準備をして迎えたい」

 3試合ぶりの勝利で自信を高めた清水ユースは次節、逆転負けを喫したFC東京U-18にリベンジを目指す。