4バック導入に後半勝負の選手起用…慶應大、入念な「早稲田大対策」で“早慶戦”完封勝利

[JR東日本カップ2020第94回関東大学サッカーリーグ戦1部・第11節(9月19日)/早稲田大学 0-1 慶應義塾大学]

取材・文=柿崎優成

 早稲田大学と慶應義塾大学。伝統校同士の対決は長い歴史があり、サッカー以外にも野球やラグビーなどで熱戦が繰り広げられ、大きな注目を集めてきた。関東大学リーグで両者が同じカテゴリーに所属するのは2016年以来、4年ぶりのことだ。

 その間、互いに2部降格の苦渋を味わった。早稲田大は2017シーズンに1年での1部復帰を果たしたが、同シーズンに慶應大が2部へ降格。そこからの再昇格に2シーズンを要した。

 毎年7月頃に早慶サッカー定期戦を行っているが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響から開催は困難と見られている。異例のシーズンに実現することとなったリーグ戦での早慶戦。無観客という特例開催とはいえ、選手やスタッフ陣が燃えないわけがない。とくに定期戦で8連敗中の慶應大は、全学年の選手たちが定期戦やリーグ戦での“早慶戦勝利”の喜びを知らないのだ。淺海友峰監督は「普段より学生たちの気持ちの部分を強く感じた」と選手たちの変化を感じ取っていた。

「昨年の定期戦では力が入り過ぎていた」(淺海監督)という反省点を踏まえ、選手たちだけで念入りなミーティングを行った。一方の淺海監督は、「私としては普段気持ちを入れまくっているので、今日は少し気持ちを抜くぐらいの感覚だった」と口では語っていたものの、「早稲田対策」で布陣を3バックから4バックに変更。MF内桶峻や松岡瑠夢といったキーマンをベンチに置き、後半勝負に懸けていたところに勝利への執念が垣間見えた。

 指揮官の目論見どおり勝負が決したのは後半、終了間際の87分だった。内桶が仕掛けて得たFKをDF橋本健人が直接沈めて1-0。早稲田大の猛攻に耐えて完封に貢献したDF日川優太は、「相手が早稲田ということで観客のいる、いない関係なく力が入り、集中して戦うことができた」と振り返った。

 今シーズン、3年ぶりに1部の舞台に臨んでいる慶應大は、4勝2分4敗(1試合未消化)でリーグ戦の折り返しを迎えた。学生時代やコーチ時代に2部リーグの経験しかない淺海監督は「よくやっている」と選手たちを評価しつつ、「1部の試合は想定をして臨んでも、その想定を超えてくるので簡単じゃない」と気を引き締める。また、ここまでフル出場を続けているディフェンスリーダーの日川は「連勝できるチャンスが3回あったのにできなかったことが課題。強いチームは連勝して勝ち点を増やしているので、後期は連勝を狙っていきたい」と目標を口にした。

 リーグ戦中断期間中の9月26日からは、来年1月に開催予定の全国大会の関東予選を兼ねた『「アミノバイタル」カップ2020 第9回関東大学サッカートーナメント大会』が始まる。早慶戦での勝利を弾みに、慶應大は全国切符獲得に向かって突き進む。