余力はそれほど残されていなかったかもしれない。しかし、強い思いが勝利を引き寄せた。
清水桜が丘は前半で2点のリードを奪い、試合を優位に進めていた。だが、「2-0は危険なスコア」とはサッカーでよく言うもの。後半開始早々に1点を返されると、その後も静岡学園に押し込まれる展開が続き、69分、オウンゴールによって同点弾を許してしまった。
試合中、清水桜が丘は何人もの選手が足がつっている様子を見せ、懸命に伸ばしたり、倒れ込んだりしていた。前半にPKを決めてチームの2得点目を挙げていた古長屋千博もその一人だ。だからこそ、延長戦では「ワンプレーで決めてやろうと思っていた」。試合後のテレビインタビューで心境を明かしたとおり、一発を仕留める強い気持ちを秘めていた。清水桜が丘は1年前も決勝まで勝ち進みながら、延長戦で藤枝東に敗れている。同じ悔しさを味わうわけにはいかなかった。
そして延長開始40秒で待望の瞬間が訪れる。右サイド後方からのロングボールが相手DFの前でバウンドし、古長屋はその隙に裏に抜け出した。あとは相手GKの位置を見ながら、うまく流し込むだけだった。
「静岡学園は本当に強いチーム」と、90分にわたる激闘を繰り広げた相手を称えた古長屋。「全国では、静岡県の全チームの思いを背負って優勝してきたい」と力強く抱負を口にした。