取材=柿崎優成
清水エスパルスユースにとってアウェイの流通経済大学柏高校戦は、プレミアリーグ創設以来勝利のない“鬼門”だったが、一人の活躍によってついに突破した。MF金子星太だ。
「見てる人が多く、(応援の)距離も近くて威圧感を感じました。これからそういう環境でやっていく試合が多いと思うので、プレッシャーを受ける中でも自分たちのプレーができるようにと心がけました」(金子)
開始早々から流経大柏のハイプレスと左右に揺さぶる攻撃に翻ろうされ、攻撃の持ち味を消された清水ユースは守備に追われる時間が長く続いた。金子が相対する流経大柏の右サイドバック、大川佳風は何度もオーバーラップを繰り返してはクロスを上げ、清水ユースに脅威をもたらした。
「前半は何回も上がってきて、左サイドバック(畠中勇士朗)だけでは対応するのが難しかったので、自分が下がらざるを得ない時間が増えて体力的にキツかった」
しかし、数少ないチャンスの中で金子が魅せた。33分、ペナルティエリア近くでボールを拾うと、自身の特徴である「タイミングの取り方と相手の重心の逆を取る」ドリブルでエリア内に侵入。相手選手をかわしに掛かったところでPKを獲得し、FW千葉寛汰の先制点につなげた。
「ドリブルで強引に行くところは課題ですけど、上手くPKを取れました」(金子)
その後、同点弾を浴び、1-1で迎えた後半も流経大柏に主導権を握られた。守備に追われる中、金子やMF鈴木奎吾が起点となって攻撃の糸口を見出そうとする。すると69分、苦しかった時間が報われる時が訪れた。浮き球を上手く収めた千葉の動きを見て、金子はDFの裏のスペースに走り込んだ。そしてスルーパスを受けると、GKの頭上を超えるシュート。見事に勝ち越しゴールを決めた。
「後半苦しい状況が続く中で自分が1本抜け出していければと狙っていました。寛汰からいつもあのような形でもらうことが多くて、今日も良いボールがきたので思いっきり振り抜きました」
岩下潤監督は金子について、独特な言い回しで評価した。
「落ち着いていて決定機をよく決める選手。足元で抑えるのが上手く、瞬間的な抜け出しも良い。PKを取ったシーンも自分で仕掛けて、詰められても“三次元の動き”で抜け出した。今日のようなプレッシャーの中でもできる、頑張り屋です」(岩下監督)
リーグ戦は始まったばかりだが、連勝同士で迎えた直接対決を制した清水ユースは3連勝を達成。「プレミアの環境に慣れてチーム状況もみんな勢いを持ってやれているので、このまま勝ち続けたい」と金子は強く意気込む。目標とする「プレミア初優勝」に向け、得失点差で上回る首位・青森山田高校を追走し、5月の直接対決まで勝ち続けたいところだ。