何点取っても尽きることのないゴールへの欲。3-0でリードして迎えた後半の立ち上がり、静岡学園の右サイドバック・岩野寛太が決めたゴールは、チームの攻撃のギアをさらに上げる役割を果たした。
県Bリーグ所属の“格下”である静岡北と対戦した一戦。22分までに3得点を奪い、順調な試合運びを見せていた。しかし、その後は攻撃陣がやや停滞。失点を重ねても心折れずに挑んでくる静岡北の守備をこじ開けきれず、「しんどい時間」(岩野)が続いていた。
岩野のゴールシーンは、そんな状況で迎えた。47分、右サイドからゴール方向へ送ったボールがそのままネットを揺らした。「本当はクロス狙いだったんですけど…(苦笑)。まぁ、どっちにこぼれても良いようなボールは常に狙って入れているので、相手キーパーを越して入って良かったです」。この1点が引き金となり、静岡学園はさらに3点を加えて7-0の大勝を収めた。
3年生の岩野は、中学時代までサイドハーフやボランチを主戦場としており、静岡学園に入学後、サイドバックにコンバートされた。ポジションは下がったものの、攻撃への意識は一切薄れていない。「カウンターを食らわないチームを目指している」(川口監督)静岡学園が理想とするサッカーは、常に攻撃をし続けること。当然、サイドバックにも積極的な攻撃参加が求められる。岩野は「(サイドバックになっても)やることはボランチやサイドハーフの時とそんなに変わらない。サイドバックの位置から仕掛けて、チームが楽になるように攻撃に参加すること」と理想を口にする。
この日のように、年代別代表歴のあるチームのエース、松村優太が右サイドハーフに入れば、縦のコンビを形成することもある。「2人でよく声を掛け合っています。僕が中に絞ったら、あいつがサイドに張って、あいつが絞ったら僕が外に張る。なるべく、あいつが前を向きやすいような、仕掛けていきやすいようなポジション取りは心掛けています。(2人のコンビネーションは)そんなに悪くはないかなと思います」。互いの長所を生かし合うことに手応えをのぞかせる。
2回戦に続く2試合連続の7-0というスコアにも浮かれることなく、「一戦一戦、みんなで集中して戦っている。もちろん全員で優勝を目指していますけど、一戦一戦、大事に戦っていきたい」と抱負を口にした岩野。清水東との準々決勝でも、アグレッシブなオーバーラップでチームに勢いをもたらす意気込みだ。
文=平柳麻衣