「今まで味わったことのない感覚」清水内定・早稲田大FW加藤拓己と筑波大DF山原怜音が直接対決

[JR東日本カップ2021第95回関東大学サッカーリーグ戦1部・第2節(4月10日)/早稲田大学 1-0 筑波大学]

取材・文=柿崎優成

 来シーズンからの清水エスパルス加入が内定している2人の大学生、早稲田大学FW加藤拓己と筑波大学DF山原怜音。4月10日、彼らは内定発表後、初めての直接対決を迎えた。

「昨年までは、そこまで意識してなかった選手が来年からチームメイトになる。今まで味わったことのない感覚」(加藤)

 試合前には偶然トイレで遭遇し、「今日の試合は活躍させていただく」と互いに健闘を誓い合った。

 早稲田大と筑波大はともに開幕戦を勝利して今節を迎えた。両チームとも慎重な入りから始まった試合は、徐々に早稲田大が主導権を握り、筑波大陣内でプレーする時間を増やしていった。一方、筑波大も後方から組み立てる戦い方を試みたが、早稲田大のハイプレスに苦しみ、縦に速い攻撃が主体に。スピードのあるFW和田育やポストワークに秀でたFW森海渡を軸にチャンスを作ったが、決定機には至らなかった。

 均衡が破れたのは60分だった。筑波大陣内で早稲田大MF丹羽匠がインターセプトして拾ったボールを、後半途中出場のMF西堂久俊が左サイドからドリブルで運ぶ。角度のないところから強引に放ったシュートは相手GKの足に当たってネットを揺らし、早稲田大が先制した。

 その後は時間の経過とともに筑波大ペースへと傾き、山原が位置する左サイドから得点チャンスを窺った。しかし、山原の特徴である「ゴールに関わるプレー」は、早稲田大の激しいマークにより封じられ、開幕戦のような躍動感は影を潜めた。「オープンな展開になってからクロスを上げるシーンが増えましたけど、ゴール前に枚数が足りない状況でも合わせなければいけない」。山原はプレーの精度に関して反省を口にした。

 試合は1-0のまま終了し、早稲田大が開幕2連勝を飾った。82分にFW奥田陽琉と交代した加藤は、「今年は“走り切る”、“体を張る”といったサッカーの基本をチームとして追い求めている。先週(拓殖大学戦)勝ったからこそ、今週1週間、改めて自分たちのプレーを見直して取り組めたことが無失点で勝てたことにつながった」とチームの出来に安堵した。しかし、ストライカーとして“得点“という結果を出せていないことに満足はできない。「1-0で勝てているからこそ許されている部分もある。リーグ戦が始まって2試合で上手くいってない部分もあるので、基礎から作り直していきたい」と気を引き締めた。

 加藤は3月12日に『2021年JFA・Jリーグ特別指定選手』の承認を得ており、今後は清水に帯同して活動する機会が増えていく見込みだ。今シーズンからミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が就任し、選手補強も含め陣容が刷新された清水では、厳しい競争が待ち受けている。ロティーナ監督体制以降、まだチームに帯同できていないが“練習生“という立場からチームの一員となり、“プロ”の意識は芽生え始めている。

「背番号『49』を与えてもらい、周りの選手はライバルになる。清水に行けば清水のやり方があるけど、自分らしく頑張っていきたい」(加藤)。目指すは在学中のJリーグデビューだ。

 一方の山原は、来週から天皇杯茨城県予選が控えている。変則的な形で開催された前回大会で5回戦まで進出した筑波大は、JFLの強豪Honda FCに敗れて大会を去った。「本大会を勝ち進むことで筑波大学蹴球部を知ってもらい、自分をアピールする場になった。自分たちがやるべきことをやって、本戦出場をつかみ取りたい」(山原)。大学レベルでは味わえない舞台を再び踏むために、意欲は高い。

 やがては同じユニフォームに袖を通してピッチに立つことになる加藤と山原。即戦力としての活躍が期待される2人は、早々に進路を決めたことを追い風に成長のスピードを早め、一刻も早くプロの環境に慣れるべく準備を進めていく。