イギョラカップに臨んだ藤枝明誠…県外強豪校との対戦経験を「チーム作りの土台に」

文=柿崎優成

 3月20日から22日にかけて行われた『第30回国際親善ユースサッカー イギョラカップ2021』に静岡県から藤枝明誠高校が参加した。新チームとなって初めての県外勢との対戦に際して、「練習ができない時期もあり、大会が始まる1週間前までバタバタした部分もあった」とチーム事情を明かした松本安司監督。チームの形を探りながら臨んだ今大会、グループリーグは成立学園高校(東京都)、武南高校(埼玉県)、矢板中央高校(栃木県)と同組となった。

 初戦の武南戦は、当日移動の疲れを隠せず試合開始から相手のアグレッシブな攻撃に苦戦。前半で2点のビハインドを背負ってしまう。後半は相手の早いプレスを上手くかわして両サイドを起点にチャンスを作り、44分に主将のMF渡辺翔太がゴールを決めた。これで反撃の糸口を見出したかと思われたが、武南に3点目を献上し、1-3で敗れた。

 2日目の矢板中央戦は、「入りを意識して良い形が作れた」と渡辺が振り返ったように、雨で滑るグラウンドでも前日のような動きの重さはなく、球際の強さやサイドチェンジを交えた大きな展開を見せた。後半に入って先制を許してしまったが、サイド攻撃からFW金刺聡にボールを集めてチャンスを窺う。すると、チームの狙いの一つである「長短のパスをつなぎながらサイドチェンジを織り交ぜ、左右から攻撃を組み立てる形」(渡辺)からゴール前で混戦を生み出し、PKを獲得。これを金刺が決めて試合は振り出しに。勢いづいた藤枝明誠はCKからDF山本蒼太が頭で合わせて逆転に成功し、今大会初勝利をつかんだ。

 勝てば予選リーグ突破の可能性があった成立学園戦。前半、風上に立った藤枝明誠は、後方からパスをつなぐ相手のスタイルに対して前からプレスを掛けてパスミスを誘い、ボールを奪う形を作った。そして得意とするサイドからのクロスで何度かチャンスを演出したが、相手DFの出足が一歩早く得点には至らない。それでも左CKからMF渡辺が相手DFのオウンゴールを誘発し、先制を奪取した。しかし後半、ギアを上げてきた成立学園の攻撃陣に翻弄され、立て続けに失点。それでも最後まで反撃を試みたが、1-2で敗戦し、1勝2敗で予選リーグを終えた。

 松本監督は予選リーグの戦いぶりについて、「いろいろな選手を組み合わせながらやっていて、連携面でミスが多かった。また、チーム全体として“戦う”部分が欠けている場面も多々あった」と振り返り、成立学園戦を例に出して、「先制したのに相手に流れを持っていかれて逆転されてしまった。辛抱する力が足りていない」と課題を挙げた。

 昨年度は県大会を制し、第99回全国高校サッカー選手権に出場した藤枝明誠。指揮官は「選手権などを経験した選手がベースになるとゲームが落ち着く。経験値が少ない選手はどうしても慌ててしまう。チームとして、もう少し台頭してくる選手が出てきてほしい」と心境を明かし、経験の浅い選手たちの奮起に期待を寄せている。

 選手たちはそんな指揮官の思いに応えるように、最終日に行われた順位決定戦では國學院久我山高校(東京都)との激戦を4-3で制し、最後に意地を見せた。藤枝明誠は今大会後、2つの強化大会を経て、4月3日の『高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ東海』開幕を迎える。コロナ禍で規制がある中でも、県外に出て強化試合を組むことができるのは昨シーズンとは大きく異なる点だ。

「(イギョラカップは)チームとしてのコンセプトが見つからない中で臨んだ大会だった。この大会で出た課題から、プリンスリーグ開幕に向けて、チームでやりたいサッカーを突き詰めていきたい。(強化試合は)Aチームだけでなく、明誠サッカー部としてチーム作りの土台になっていく」(渡辺)

「今年は今年の選手の特徴を生かしながら開幕を迎えたい」という松本監督のもと、実力のあるチームとの対戦経験を糧に強化を進めていく。