「ジェフのユニを着てここに戻る」順天堂大GK廣濱顕哉がフクアリのピッチで再確認した古巣愛

[JR東日本カップ2020第94回関東大学サッカーリーグ戦1部・第15節(11月1日)/桐蔭横浜大学 1-2 順天堂大学]

取材・文=藤井圭

 順天堂大学と桐蔭横浜大学の一戦は終了間際に上野瑶介が挙げた決勝点により順天堂大が2ー1で勝利した。勝ち越しゴールが決まる数分前、順天堂大はCKからピンチを迎えたものの廣濱顕哉の好セーブで凌ぎ、これが後の歓喜をもたらした。廣濱はこの試合、並々ならぬ思いで挑んでいた。

 10月20日に行われた前期リーグの延期試合・早稲田大学戦では自らのミスで失点し、0ー2で敗れてしまった。さらに、その4日後に行われた国士舘大学戦では4失点を記録。「悪い流れをそのまま国士舘大戦でも僕自身が持ち込んでしまった」と連敗を悔やみ、今節を迎えていた。

「監督がまた信じて使ってくれたので期待に応えるという思いと、本当に上手いのに(試合に)出られない先輩たちに対しても失礼のないプレーができるように。今節は今までで一番気持ちが入った試合だった」

 この強い思いが自身のプレーとチームの勝敗にも表れた。90分に訪れた桐蔭横浜大のCKの場面、ファーサイドからのヘディングは枠を捉えていたが、廣濱の冷静なパンチングで事なきを得た。「角度もなかったので、シュート自体はそこまで難しいものではなかった」と廣濱。その後、再び相手のCKを凌ぐと、そのカウンターからFKを獲得し、これが決勝点に結びついて土壇場で勝ち点3を手にした。「“自分がチームを救う”というプレーがチームを最後まで動かす力になると思っている」。廣濱の強い気持ちで見せた好セーブがフィールドの選手たちの原動力となり、勝利を手繰り寄せた。

 また廣濱はもう一つこの試合に懸ける思いがあった。「黄色くないフクアリには違和感はある」と笑う彼はジェフユナイテッド千葉U-18出身。中学生から千葉のユニフォームを着てゴールマウスを守り続けた廣濱にとって、フクアリのピッチは幼い頃から夢見ていた舞台だった。アカデミー時代、スタンドから見守ったトップチームの選手たちの勇姿と、フクアリのピッチに立った自分の姿を重ね合わせると、目頭が熱くなった。

「ジェフの選手が試合をしている姿を中1の時から観てきた。チームが変わってもこのスタジアムでプレーできるのは、『もっとやらなきゃいけない』という気持ちになる」

 プロになることを目標に大学進学した廣濱は、レベルの高い関東大学リーグに身を置くなかで、過去の自分自身の甘さに気づいた。

「(千葉U-18では)千葉県リーグでやっていて、そこでやれていることに満足していたから、自分はプロに上がれなかったんだなって改めて思った。もっと高いレベルを自分自身に求めていかなければいけなかったし、普段から高い意識でトレーニングしていかないとプロは無理だったんだなと気づいた」

 アカデミー時代は気づけなかったことに大学のチームでプレーすることで気づかされた。廣濱はチーム内での激しい競争のなかで1年目から試合に出場し、他大学のトップレベルの選手たちと戦っている。アカデミー時代に満足してしまっていたレベルでは、今の自分は満足しない。その気づきが自分自身を高いレベルへと引き上げていく。そして、その頂点には廣濱が見据える未来がある。

「ジェフのユニを着てここに戻るために4年間頑張る」

 千葉のユニフォームを再び着ることができるように。フクアリのピッチで千葉のゴールマウスを守れるように。4年後、千葉に戻ることが「一番の目標」だと彼は語った。“古巣”千葉への帰還を目指す廣濱顕哉の4年間をかけた物語はまだ始まったばかりだ。