取材・文=藤井圭
立正大学にとっては2カ月ぶりの関東大学リーグ戦だった。新型コロナウイルス感染拡大防止のため大学からの指示で部活動としてサッカーができなかった。この期間を利用し主将のFW平松昇は、来シーズンの加入が内定している湘南ベルマーレでプロの舞台での経験を培った。
JFA・Jリーグ特別指定選手に認定されている平松は、プロ生活の幕開けに先んじて公式戦の場を踏んだ。9月5日に行われた明治安田生命J1リーグ第14節・ヴィッセル神戸戦でサブに入ると、67分から途中出場しJリーグデビュー。「失うものは何もないので、緊張というより思い切ってやろうと思った」とShonan BMWスタジアム平塚のピッチへ足を踏み入れた。
思い切りの良さはプレーにも現れた。70分に神戸のチャンスの場面ですかさずゴール前へカバーに入り、枠内シュートを頭でブロック。このプレーは他クラブのGKたちとともに『週間スーパーセーブ』として特集され、守備でもチームへの貢献が光った。平松は「(気持ちを)見せられて良かった」と笑みを浮かべながらデビュー戦を振り返った。
約2カ月間の練習参加では、プロの世界の“基準”を肌で感じた。
「サッカーを仕事としている人たち、サッカーに懸けている人たちと実際に練習したり直接話をさせてもらうなかで、今後自分が戦っていかなければいけない厳しい世界の“基準”を体験することができた」
また、練習の中ではプロの選手と一緒に活動できることを「チャンス」と捉え、自発的にコミュニケーションを取り、多くの選手にアドバイスを求めた。なかでも「一番長く話をした選手」として名前を挙げたのは、チーム最年長の石原直樹だ。
「今までずっとトップレベルで活躍し続けている選手なので、練習後に自分から『このプレーはどうでしたか?』と聞いたり、同じポジションとしてどういう考え方を持ってプレーしているのかなど、いろいろな話を聞かせてもらった」
石原からは「もっと相手選手を見ることを意識したほうが良い」という金言をもらった。足元の技術が高い選手ほど相手を見ず、自分の中でのイメージだけでプレーしてしまう傾向があるという。平松自身も「課題だと思っていたところだった」と自覚があり、助言を素直に聞き入れた。
後期リーグ開幕戦となった国士舘大戦ではノーゴールに終わり、チームも無得点で敗れるという悔しさを味わった。今後は後期のスケジュールに前期の未消化試合も加わるため、ハードな日程が待ち構える。主将としてチームをけん引する役割を任されている平松は、湘南で得た経験や学んだ知識を立正大に還元していく。そして、すでにデビューを果たしたプロの舞台で来シーズンから輝くために、自身の技術や思考も“プロ基準”へとさらに高めていく。