全員でハードワーク、“立正大スタイル”で今季初勝利…シャドーで奮闘した坂井剛が2得点

取材・文=柿崎優成

 JR東日本カップ2020第94回関東大学サッカーリーグ1部の第3節が7月18日に行われ、桐蔭横浜大学と立正大学が対戦した。

 先にペースを握ったのは桐蔭横浜大だった。速いパス回しからサイドに攻撃の軸を置き、前線からのプレスを持ち味とする立正大の守備網をかいくぐってチャンスを窺う。なかでも存在感を発揮していたのはMF鳥海芳樹で、彼が前を向いて仕掛けるたび、立正大DF陣に脅威を与えた。先制点の場面にも鳥海が絡んでいた。23分、クリアボールを拾ったMF橘田健人からMF神垣陸につなぎ、左サイドへ展開。ボールを受けた鳥海は左足に持ち替えて低いクロスを送り、最後はMF山田新がゴールにねじ込んだ。山田は前節までFWとして出場していたが、この日は右サイドに入り、2試合ぶりの得点という形で指揮官の起用に応えた。

 その後は一進一退の攻防が続いた。両サイドバックが高い位置を取る桐蔭横浜大に対して、素早いプレスからショートカウンターを狙う立正大。試合の流れを変えたのは、「相手より一歩、早く動くことを意識していた」という立正大FW坂井剛だ。シャドーの位置で起用された坂井は、攻撃に転じた際、誰よりも早い動き出しで果敢にゴールを狙った。右ウイングバックのMF鈴木康孝がGKとDFの間を狙って上げたクロスに飛び込んだり、自ら仕掛けてシュートに持ち込むなど、徐々に立正大に得点の匂いが漂い始める。

 すると後半に入り、積極的な姿勢が実を結ぶ。52分、左サイドからMF田中宏武が縦に仕掛けてファーサイドへクロス。相手GKが弾いたこぼれ球を鈴木が折り返し、待ち構えていた坂井が押し込んで同点とした。坂井は「クロスからゴールを狙う練習をしてきた。鈴木が良い折り返しのボールを出してくれて良かった」と振り返った。

 この1点で勢いづいた立正大は、今シーズン初勝利を目指して勝ち越し点を狙う。62分、右サイドで得たFKからゴール前の混戦の中でファウルを受け、PKを獲得。これを坂井が決め、ついに逆転に成功した。

 ビハインドとなった桐蔭横浜大は、MF千葉東泰共や長身FWの寺沼星文ら4人の交代カードを次々と切って打開を図ったものの、ロングボールを寺沼に当ててから仕掛けた波状攻撃は立正大DF陣の粘り強い守備に弾き返され、ゴールならず。2-1のままタイムアップを迎え、立正大が今シーズン初白星を挙げた。

 猛攻に耐えた立正大GK深谷圭佑は試合後、DF陣と抱擁を交わして喜びを表現した。「先にやられてしまったけど、『自分たちのやり方を続けていけば問題ない』とハーフタイムに全員で共通理解ができた」。逆転でつかんだ白星に安堵の表情を浮かべた一方で、「3試合で7失点と失点が多いので、もっと減らして立正大の守護神になりたい」と課題も口にした。

 また、2ゴールの活躍を見せた坂井も「個人としては二ケタ得点を目標にしつつ、チームが志向するサッカーに貢献していきたい」と、今後もチームプレーに徹する姿勢を示した。先制を許しても慌てず、立正大が持ち味とするチームワークと積極的な守備からリズムをつかむサッカーで、勝利を手繰り寄せた。

 次節、立正大は中央大学と対戦。桐蔭横浜大は2連勝と波に乗る早稲田大学との一戦に臨む。